国際シンポジウム2012 開催報告
- 開催日時:平成24年12月13日(木)10:00-17:30
- 開催場所:東京大学 本郷キャンパス工学部2号館213号室
- 主催:東京大学大学院工学系研究科 総合研究機構イノベーション政策研究センター
- 共催:東京大学大学院工学系研究科 技術経営戦略学専攻, 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
- 協力:東京大学政策ビジョン研究センター, 東京大学STIG
- 後援:独立行政法人 科学技術振興機構
Abstract (開催趣旨)
Rising importance of innovation policy and acceleration of globalization reinforce needs to design, implement, and evaluate policy alternatives based on scientific approach and evidence. Currently, initiatives are launched to establish science of science and innovation policy (SciSIP). Although universities in Japan faces severe budget constraint, much effort has been done for nurturing innovation. It is requested for universities and public institutes to play a crucial role in realizing innovation and also to envision a path of science to innovation for society.
This international symposium will be held to share the current status and achievements in SciSIP and to discuss ideas for implementing outcome of SciSIP in policy making process. The focus is interdisciplinary field between social science and computer science, which is emerging and promising to support policy analysis and policy making. Based on requests from policy making side given in this symposium, we will shape and share future direction and perspectives of SiSIP with learning from lectures by leading scholars in this field and discussions among participants.
世界各国におけるイノベーション政策の強化と、グローバリゼーションの加速の中で、科学的な知識や手法に基づき、政策を立案、実施、評価することの重要性が増しています。各国でイノベーション政策の強化と併行して、科学技術イノベーション政策の科学の構築に向けた取り組みが行われている一方、我が国では厳しい財政状況の中、関係各所で懸命の努力が続けられています。
大学等の公的研究機関においては、イノベーションの実現に向けてより一層その役割を果たすとともに、基礎研究等がイノベーションへと繋がる道筋を社会に対して示すことが求められています。
本シンポジウムは、以上の背景を踏まえ、世界における科学技術イノベーション政策の科学の現状や最新の研究成果を共有し、政策の科学の成果を、科学技術イノベーション政策や政策過程の中に実装する方法について議論するために実施するものです。特に、本学術領域において急速に発展しつつある情報工学と社会科学の融合による新たな政策分析・立案支援手法に関して議論を行います。本シンポジウムでは、政策立案の現場からの要請を踏まえ、科学技術イノベーション政策の科学の今後の目指すべき姿を、講演者や参加者の皆様と議論することで、認識を共有していきたいと思います。
プログラム詳細
Opening Session: Expectations and Achievements of Science of Science Policy
Chair: Prof. Ichiro Sakata
坂田一郎教授
Introduction of IPRC: Prof. Kazuyuki Motohashi (IPRC, Univ.Tokyo)
元橋センター長より開会挨拶がされ、また当センターの社会連携、研究成果の紹介および今回のシンポジウムの趣旨を説明いたしました。
Greeting Address: Prof. Kenji Kurata (NEDO)
太陽電池の研究開発における世界市場と日本の貢献についてご講演されました。また、NEDOがこれまで支援してきた内容を紹介するとともに、今後の研究支援活動に関してもご説明がありました。
Special Talk: Policy Needs, Academic Input, Collaboration and Integration: Dr. Kenzo Fujisue (A member of the House of Councilors)
ご公務により止むなくご欠席されたため、総務省より書簡を頂き、坂田教授が代読いたしました。本シンポジウムへの感謝の意を示されるとともに、今後の技術経営研究の発展の重要性に関して述べられました。
Plenary Talk: Science of Science Policy: Opening-up and Closing-down of Appraisal: Prof. Andrew Stirling (SPRU, Univ. of Sussex)
Policy Knowledge のOpening Up と Closing Down に関して紹介されるとともに、具体的にどのような意思決定手法が有効かを発表されました。また、Multi-criteria Mapping (MCM) による具体的な応用に関して説明をされました。
Session 1: Exploring Science and Technology
Chair: Dr. Katsuhide Fujita
Plenary Talk: Visualizations of Science and Technology: Prof.Katy Börner (Indiana Univ.)
科学技術計量学のための可視化の意義と最新の成果を発表されました。特に、地理的データと特許や論文データを結びつけて可視化することで、様々な意思決定支援ができることを具体的に示されました。
Invited Talk: Science on the Web; Publishing and Sharing Metadata on Scientific Activities: Prof. Hideaki Takeda (Natl. Inst. Info.)
メタデータの共有および公開が研究活動に与える影響およびWebデータと研究活動の関係に関して講演されました。ORCID (Open Researcher and Contributor Identifier) や RNS (Researcher Name Resolver) など実際に公開されている研究者情報をどのように結びつけるかに関しても触れられました。
Research Presentation: Envisioning a Path from Science to Innovation: Prof. Yuya Kajikawa (Tokyo. Inst. Technol.)
Scientometric Approach に基づいて、情報工学技術を活用し、どのような手法で政策の策定につなげるかに関して講演しました。また、Scientometric Approach の具体的な研究成果を示しました。
Session 2: Realizing Innovation Ecosystem
Chair: Prof. Yuya Kajikawa
Plenary Talk: Innovation Ecosystem: Dr. Martha Russell (Media X, Stanford Univ.)
Innovation Ecosystems を進めるためにどのようなことをすべきかに関して講演されました。Two Pizza Rule, Network SymphonyなどEcosystemにおける様々な現象に関して、議論を展開されました。
Invited talk: Expertise and Activity on Industry-Academia Collaboration: Prof. Toshiya Watanabe (Univ. Tokyo)
日本の大学が研究成果を特許として公開することの重要性と近年の状況に関して講演されました。また、東京大学をケーススタディとして産業と学術のコラボレーションの重要性を示されました。
Research Presentation: From Network to Networking: Prof. Junichiro Mori (Univ. Tokyo)
地域クラスターにおけるサプライチェーン解析のための手法を発表しました。さらに、機械学習を用いて新たな中小企業の結びつきを推薦するシステム(Smeet)を紹介しました。
Session 3: Institutional Aspects of Science of Science Policy
Invited talk: Policy Making and Policy Process: Prof. Tateo Arimoto (Japan Science and Technology Agency)
政策策定およびプロセスに関してScience and Technology Indicators (STI) の立場からご講演されました。イノベーションを起こすためにどのような人々とシステムが必要か示されました。
Panel Discussion
- Prof. Katy Börner (Indiana Univ.)
- Dr. Martha Russell (Media X, Stanford Univ.)
- Prof. Andrew Stirling (SPRU, Univ. of Sussex)
- Prof. Hideaki Shiroyama (Univ. Tokyo)
- Mr. Yoshio Matsumi (ITOCHU Corporation)
- Prof. Tateo Arimoto (Japan Science and Technology Agency)
- Moderator: Prof. Ichiro Sakata
"Hot topic of research for advancing of Science and STI"と"Opportunity of research collaborations among us" をトピックとして、パネリスト間で議論が交わされました。Prof. Andrew Stirling はネットワーク解析が重要な分野だと考え、解析結果が企業や社会の意思決定に大きな影響を与えうるものだと述べられました。Dr. Martha Russell はScience Policy がScience やSTIの発展のために重要だと述べ、Science Policy に基づいたプログラムを通して、政府、大学、企業が協調し科学の発展のためのサイクルを実行することで、さらなる成長が期待できると主張されておりました。Prof. Katy Börner は科学発展のためのシステムが重要と考え、研究者同士が国や年代の垣根を越えて協調するシステムの重要性を主張されていました。Prof. Tateo Arimoto は若い学生や技術者がよりScience of Science Policy を発展させていき、JSTをはじめとしたScience Agency が支援していくことが重要と述べられました。Prof. Hideaki Shiroyama は様々な分野をつなぎ、強固なヒューマンネットワークを形成することが重要と述べられました。また、様々なエビデンスに基づいた意思決定を行い、研究者、政治家、市民が参加できる新しい意思決定の仕組みを作ることを期待されておりました。Mr. Yoshio Matsumi は企業家の立場から、イノベーションを推進させるためにInnovation Policy、科学技術、研究などを統合させることが重要であるとともに、双方がお互いを支える仕組みが重要だと述べられました。他にも"Barriers to be removed for advancing of Science and STI"、大学間がどのように連携していくか、Science of Science Policy と経営哲学に関して、科学技術の失敗をどのように社会が受け入れるべきかなどについてパネリスト、会場で活発な意見交換がされました。
Closing Remark: Prof. Ichiro Sakata
坂田教授よりイノベーション政策研究センターの約5年間の研究成果や社会的貢献に関して統括するとともに、閉会挨拶により幕を閉じました。