第一回エネルギー効率化会議報告


 本報告は本センターの連携組織である、東京大学政策ビジョン研究センターのプロジェクトに関わる会議報告で、両センターの兼任の坂田一郎教授および、佐々木一特任研究員による報告です。なお、本報告は東京大学学内広報2011年9月号(9月末日発行)の"ポリシーアルト Policy + alt vol.24"にも掲載されます。

 近年の発展途上国に関するホットイシューのひとつにエネルギー需要の急速な増加が挙げられます。東アジアでは再生可能エネルギー以上に、エネルギー効率化の余地が大きいと認識されています。
 本センターの坂田一郎教授および佐々木一特任研究員は、協力組織である東京大学政策ビジョン研究センターのプロジェクトとして、東アジアASEAN 経済研究センター (ERIA、本部ジャカルタ) より、エネルギー効率化ロードマップ・プロジェクト(Energy Efficiency Roadmap Formation Project)の依頼を受け、昨年 11 月より調査・研究活動を進めています。今年は東アジア首脳会合の枠組みの下で、8月24日、ラオスの首都ビエンチャンにおいて開催された第一回エネルギー効率化会議に招待を受け、活動成果の中間報告をしました。
 本会議は、政策担当者、学者、エネルギーや経済開発の専門家、民間企業が領域を超えて集まり、東アジアのエネルギー効率化の問題について、政策への理解を深め、 各国の知識や経験を共有し、将来の可能性を議論する機会を提供することを目的としたものです。


東アジア首脳会合の枠組みの下で開かれた第一回エネルギー効率化会議には、アジア十数カ国から政策担当者、学者、企業等多彩な顔ぶれが集まった

同会議には、ERIA、アジア開発銀行、国際エネルギー機関等の国際機関、アジア十数カ国から200 名以上が出席しました。本センターからは、プロジェクト代表である坂田一郎教授と、佐々木一特任研究員が参加しました。 会議はラオスの Mr. Soulivong Daravong エネルギー鉱物大臣の開催挨拶で始まり、 オープニングリマークとして、経済産業省の朝日審議官より、東アジア各国におけるエネルギー効率化にむけて知識と経験を共有し相互協力していくことが必要であるとのアピールがなされました。


経済産業省 朝日審議官からは、エネルギー効率化の重要性とともにアジア諸国における相互協力が不可欠であるというメッセージがなされた

 本会議では、エネルギー効率化に向けた挑戦と機会、エネルギー効率を高めるためのメカニズム、エネルギー効率化に向けた技術と民間セクターの役割、エネルギー効率化ロードマップ・プロジェクトをテーマとした4セッションが設けられました。
 本学は、このうち第4セッションを担当し、東京大学政策ビジョン研究センターの吉澤特任講師による発表のほか4名からの発表とパネルディスカッションを行いました。吉澤特任講師からは、ラオスにおけるエネルギー効率化に関して、技術ロードマップと技術アセスメントを手法として用いた、将来シナリオの提案を致しました。


政策ビジョン研究センターの吉澤剛 特任講師による、ラオスのエネルギー効率化シナリオに関する講演


「エネルギー効率化ロードマップ」セッションにおけるパネリスト(1) 左:政策ビジョン研究センター長、城山教授


「エネルギー効率化ロードマップ」セッションにおけるパネリスト(2) 右:政策ビジョン研究センター、吉澤特任講師

 会議では、参加者による議論や意見交換にもとづきエネルギー効率化の意義と促進の重要性の認識が一層深まり、今後の会議の継続的開催も提案されました。本会議を受け、東アジアの持続可能な経済発展のため、エネルギー効率化に対し多角的に向上させてゆくべく、ERIAの西村英俊事務総長より、今後の一層の貢献が表明されました。
 本会議の結果は、本年 9 月にブルネイで開催される第 5 回東アジアエネルギー大臣会合に報告されることになっています。


クロージングセッションのモデレーターを務める坂田一郎教授


ERIAの西村英俊事務総長より、今回の会議開催の成功をうけERIAとしても会議の継続的開催に対する協力を惜しまないという、力強いメッセージとともに本会議は幕を閉じました

効率化への将来シナリオ

 本プロジェクトメンバーは本会議で、これまで実施してきた調査研究の報告を行いました。ここではその概要を記します。

 我々の報告内容は、ラオスに対し、主に3 つのシナリオを挙げ、その組み合わせによって今後のエネルギー効率化ロードマップを策定していくことを提案するものです。
 1 つはキャッチアップシナリオです。これは、 今後年間8%の経済成長を目標に掲げるラオスが、安定的な国内電力供給を展開しつつ、先進国に追いつくことを優先させるシナリオです。このシナリオでは、送配電網や盗電などのロス削減を重要事項として提案します。
 次に貧困削減シナリオです。同国の目標として 2020年に最貧国脱出を掲げていることを背景に、国全体の電化率向上を優先事項とするシナリオです。小水力発電や太陽光発電といった再生可能エネルギーをオフグリッドへ展開するといった提案が挙げられます。
 最後にあげるのが外貨獲得シナリオとなります。ラオスが ASEANのバッテリーとなるべく、近隣諸国への電力の輸出入を外貨獲得の手段とすることに重点を置いたシナリオです。長期的な政策としては、高圧直流送電などの低損失の送配電システムも十分考慮に入れるべきであると考えます。
 これら3つのシナリオを枠組みとし、相互のトレードオフを考慮し相乗効果を狙うことが望ましいと考えています。



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